投げる
[平成29年2月8日]
年長のドッヂボールが盛り上がっているせいか、近頃園内全体でボール遊びが盛んです。そこで、「投げる」ということと運動発達について少し書きたいと思います。
「投げる」という動作は、実は幼児期の子どもにとってかなり複雑で高度な動きであると言われています。
小さな子供が初めてボールを投げる時、ボールを手で前に押し出すような形で投げることがほとんどです。やがてそこにテイクバックや体軸の回旋、足の踏み出し、体重移動などが加わっていきます。そして最後は手を大きく振りかぶって体を弓なりに反らせ、ボールに体重を乗せて投げるという動きができるようになっていきます。
一つ一つの個別の動作を確実に習得し、脳が指令を出してそれらを総動員しながら、体を絶妙にコントロールしてはじめて「投げる」という動作が完成するのです。だからボールを投げる姿が、その子の運動発達のバロメーターの一つのように扱われることもあります。
足を上げての体重移動も、小さい子にとってはかなり高度な動きです。
年長男子のフォームは、さすが。
保育界・教育界では、随分前から子供の運動能力の低下に対し警鐘が鳴らされています。最近の子供は自分の体を上手にコントロールできない子が多いのです。小さな動作で言えば「靴紐が結べない」とか、咄嗟のことで言えば「転んでも手が出ない」とか、遊びの中で言えば「リズムに合わせてうまく体を止めたり動かしたりできない」とか。身体を操作する能力が低下してきているのです。実は運動能力の発達は、意欲や気力などの精神面の発達にも繋がっていて、運動能力が低下すると物事に対する意欲ややる気も低下していくと言われています。運動能力は、子どもが「生きる力」を身に付ける上でとても重要な要素の一つなのです。
ドッヂボールは、園庭で子供が多くの運動能力を獲得できる遊びの一つだと言えると思います。
ただ…、平らな園庭というのもまた、ある意味問題なわけです。
例えば「走る」という動作を見た場合、平らなグラウンドだけでは使う動作は限定的です。そこに斜面や段差が加わると途端に足元が不安定になり、要求される動作が格段に増えます。不安定な危ない足元の状況が、子供の運動発達を促し、身体コントロール能力を高め、それが精神面や情緒面の発達にも良い影響をもたらしていきます。
太鼓橋で戯れる子猿たち。(^^) 上半身の運動能力も大切。
カーニ♪ カーニ♪ と、リズムをとりながら横歩き。2歳の発達に大切な要素。
お、順番待ちもしっかり並べていますよ。
蹴るのも大事。
運動発達が順調だと、コミュニケーション能力も順調に育ちます。
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妙福寺の園庭は広いのですが、ほぼ真っ平らなので今ひとつイケてません…。ここで子供が習得できる動作は種類が少ないという意味です。広い園庭というのはそれだけで贅沢ではありますが、他の園ではたとえもっと狭くても子供の発達に最高の園庭作りをしているところがあります。私は最終的には園庭全体を森と山にしたと思っているのですが、まあそれにはもう少し時間をください。
ただ、うちの園には林(第二園庭)があります。そこがうちのめっちゃ贅沢なとこなわけです!(^0^)
と、とりとめがなくなってしまいましたが、これが乳幼児期の重要な「教育」の一つだということを言っておきたいと思います。保育園はただ遊んでいるのではありません。遊びが子供の成長発達にとって非常に重要であり、その遊びの「質」が、その子の人生の質を左右すると言っても良いと思います。だから保育園はその「遊び」を科学して、子供の豊かな成長発達を支援するのです。それが保育園の仕事であり教育なのです。
3歳クラスの子達が大好きな丸太の山。
彼は今、トイレットペーパーの芯を望遠鏡にして、何かの主人公になりきって探検をしています。(^^)
以前とある園の園長先生から「なんでこんな危ないものがあって平気なんですか?」と言われてしまいました。もちろん私達なりに考えて安全は確保しています。子供はこういう所を登ったり降りたりするのが大好きですし、それがまた子供の発達にとても必要なことだと思っています。
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年中の女の子と葉っぱで遊んでいたら、こんなのができました。
「バッタみたい!」
と喜んでくれました。
「バッタが飛ぶよ。ピョーンピョーン。ほら、これカバンにもなるんだよ。こうやって持つの。ここを開けるとお金を入れられるよ。お財布にもなるんだよ。」
子供の口から次々と発想が飛び出します。
自然のこと、運動発達のこと、だけじゃなく、とにかく色んなことを考えながらみんなで楽しく保育しています!