キノコ
[令和1年7月6日]
「園長先生ーっ!」と、4歳女子2人が大慌ての様子で私の元へ走ってきます。「あっちにすごいキノコが出てるんだよ、来て!」とかなり興奮気味です。どれどれ、と走ってついていくと、そこにあったのは…
これです!お〜、確かに。なかなか見事。
「ここ最近ちょっとキノコが少なかったんですけど、一気に出てて驚きました!」とそばにいた担任のコメント。
キノコは不思議で、ある時気づくと突然ウワーッと生えていて、ギョギョギョ!と思っているうちに、次に気づいた時にはすっかり消滅していて、あれれ?!という感じだったりします。神秘的な自然の営みです。
子供達は、触りながら気持ちいいだの柔らかいだの口々に感想を述べ合って興奮しています。そのうち「おままごとに使おう!」とむしり取り始めました。
正直、こんなにキノコが生える保育園も珍しいと思います。良いんだか悪いんだか…。笑)なんてったってそこら中に丸太が転がっていて一年中雨ざらしなんですから仕方ありません。これらはうちの境内や近隣で伐採された樹木たちです。こんな丸太も買えばそれこそ1本ウン万円。実は結構贅沢なことなんですよ。野ざらしの丸太は古くなると朽ちて少し汚らしく見えるかもしれませんが、朽ち木は自然の宝庫で子供達の素晴らしい遊び相手になります。切られた木もここまで使ってもらえれば、ある意味本望ではないでしょうか。
キノコは少し怖いとお感じになる方もあるかもしれません。中には稀に触るだけで危険なキノコも存在します。まぁそれはどんな生き物でも同じですが。園長としても常に危険を意識しており、その都度調べたり詳しい人に聞いたりして確認しています。うちはこういう環境なので、慣れているキノコは触って良いことにしています。もちろん絶対に食べませんし、子供達は遊びであっても絶対に口の中に入れてはいけないというルールになっています。
キノコの感触を確かめたり生え方をじっくりと観察することも子供達にとっては大きな学び。これも大切な教材だと考えています。
「色が違う。」
摘み取ったキノコを眺めながら男の子がつぶやきました。表と裏の色や様子の違いに気づいたようです。
「へー、どうなってる?」と聞いてみると、そばに一緒にいた別の女の子がキノコの裏側をしげしげと眺めて言いました。
「………トランプみたい… 。」
すると、先ほどの男の子がまたポツリ一言。
「うち、カレーの匂いがするトランプあるよ。」
自由な感性、楽しい会話。キノコの裏側のひだを見て「トランプみたい」とは恐れ入りました。でも確かに分かる!そしてカレーの匂いがするトランプへと話が発展。そんなものがあるとは知りませんでした。面白いなぁ。
しばらくすると、
キノコ畑はすっかり綺麗になっていました…。わお。
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別の場所では3歳男子チームがままごとに夢中。
グループで会話しながら延々と調理が続いています。
「今、包丁使うから。」と言って、男の子がシャベルで小枝を切り始めました。
もちろん実際には切れませんが、それは関係ありません。しっかりと見立て遊びができている証拠です。枝を1本切った後に、私の方を向いてにっこり笑って一言。「指、切らなかった。」(^^)
「お〜、上手だね!」と応えると、その後、写真手前の黄色い器から一本ずつ枝を取り出して切っていきました。「にんじん。」「じゃがいも。」「たまねぎ。」「これをこっちに入れて…。」
と言いながら、一つ一つ包丁で刻んでいき、その刻んだ材料をすべてフライパンの中に入れて炒め始めました。生活の模倣が本当に上手です。
うちは3歳クラスから調理をしますので、そこで体験して学んだのかもしれませんし、家庭でも料理のお手伝いをしているのかもしれません。子供はこうした生活の模倣を通じて、自分の出会った場面を無意識に再現し、無意識に脳の指令と体の動きの連携の確認もしているのです。どうするとどんな風に自分の体が動くのか。それを子供は遊びの中で一つ一つ試しながら学んでいます。
何気ない一つ一つの子供の姿や言葉の中に子供の大きな成長を感じます。小さな小さな子供の目には、身の回りの色々なものが鮮やかに写っていて、それを全身全霊で吸収しながら成長していくのです。見たもの、聞いたもの、体験したものが一つ一つ積み重なって心や体に染み込み、やがてその子自身を形作っていきます。
子供達に豊かな体験をさせてあげたい…。そうしみじみと思います。