自然あそび研修
[平成29年5月25日]
昨日、園内で職員研修を行いました。日頃保育者が受ける研修は多岐にわたります。子どもの成長発達、健康管理、コミュニケーション、メンタルケア、家庭支援、地域支援…。そして、絶対に欠かせないのが「遊び」に関するものです。子どもは遊びを通して成長発達していくもので、遊びは子どもにとって最も大切な仕事です。だから保育園は子どもの「遊び」を見つめ「遊びの質」を重視します。
今回の研修は「自然あそび研修」です。妙福寺の広い敷地内の自然環境をじっくり観察して歩き、見つけたものでどんな遊びができるのかを学びます。講師は秋元秀友先生。触ったり、見たり、匂いを嗅いだりといった五感を使う自然遊びのプロフェッショナル。さてさてどんな内容になるでしょう!
身近な花や葉っぱを毛糸に通して帽子飾りや首飾りを作ると、
自然と気分が上げってきます。さあ、スタートです!
ふと横を見ると蜘蛛の巣です。霧吹きで水をかけると、あらら、綺麗な模様が浮かび上がりましたよ。縦の糸はクモが歩くのでツルツルしているんだよ。
蟻地獄にアリさんを1匹投入。アーンド(&)、その後はもちろん掘り返してアリジゴク(ウスバカゲロウの幼虫)氏ともじっくりとご対面。
タイサンボクの葉っぱ
石ころのカメさん
石コロボックル
石ころたん
石ころ野郎
ありゃ……
植物を中心に観察して遊んだはずなのに、撮った写真は虫と石ころばかりでした…。
気を取り直して、今日出会えた遊びを列挙してみます。(思い出せる範囲で)
カタバミの10円玉磨き、ツツジの葉っぱと花びらのネックレス、蜘蛛の巣の模様と触り心地、セミの抜け殻と幼虫の生態、ギンナンの若い実、セイヨウボダイジュの実の飛ばし方、イノコヅチのひっつき虫、シロダモの葉っぱで油取り、ビナンカズラの柔肌のような葉、アカシデの種の天使の羽、タイサンボクの固い葉と大きな花の蕾み、甘いクワの実、ダンゴムシ、ワラジムシ、コガネムシの幼虫、コメツキムシ、アラゲキクラゲ、山桜のサクランボのマニキュア、ヌルデ、アメリカフウロソウの種の秘密、シロザの粉感、ヒノキの匂い、サンショの油点と匂い、スギの葉っぱのネジり遊びと匂い、クスノキの匂い、クサギの匂い、ムクノキの爪磨き、クズ鉄砲、エノキの葉、ミズキの葉の糸引き遊び、テントウムシの幼虫、クリの花、ケヤキの実の飛び方、カヤの葉の匂い、桜の枯れ枝遊び、シロツメクサの引っぱり遊び、バンペイユの油点と匂い、ソラマメの感触と鳥の顔、石ころの目玉遊びなどなど。
結構すごいですね。
おっと、写真も数枚ありました。
西洋ボダイジュの実。羽が付いていて、風に吹かれて遠くへ飛んでいきます。
シロザ。この葉っぱの白いところが粉なんです。粉っぽい!
タイサンボクの花のつぼみ。わお、大きい!タイサンボクって、恐竜時代からある木の一つなんだそうです。生きた化石?
桜の枯れ枝 のオブジェ。自然が多いと枯れ木も多くなります。危険な枯れ木の見分け方や簡単な危険回避法を学び、同時にこの枯れ木が素晴らしい遊びの素材になることも学びました。
今回私が個人的にすごくはまったのは、葉っぱや木の実をちぎって嗅いでのアロマ系遊びです。シロダモ、ヒノキ、サンショ、スギ、クスノキ、カヤ、バンペイユなどなど。癒されました…。ついでにクサギもじっくり嗅ぎましたよ。ゴマです、濃厚なゴマ。
さて、今回のこの研修で楽しんだこと(学んだこと)を子ども達の日々の遊びのなかにどう織り込ませていくのか。現場の保育者の腕の見せ所です。
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「自然あそび」というとアクティブで非日常的なアウトドア系の遊びをイメージする方が多いかも知れません。でも今、保育園で私たちが求めているのはそういうものではなく、逆にすごく日常的な、身近な場所に当たり前のように溢れている何気ない自然に気づき、向き合う遊びなのです。
センス・オブ・ワンダー。それは、人間が子供時代にもともと持っている力だと思います。なのに大人になると多くの人が忘れてしまう力でもあります。今は何でも刺激が強い時代です。ゲーム、テレビ、おもちゃ、遊園地。どれもこれもカラフルで派手で賑やかです。でも、そういうものって自然の中にはほとんどありません。大抵、自然はもっとずっと地味で静かなのです。だから刺激の強い人工物にばかり触れていると、身の回りにある自然を感じる力が弱くなってしまう気がします。そして、人間としての、いや、生き物としての繊細な感受性も失われていくのです。それは相手の気持ちや、周りの状況を感じ取り察する力が弱くなることにも繋がっていくと思います。
身の回りには自然が溢れています。なのに私たちはそれにほとんど気づいていません。小さな公園にも、毎日の通園の道端にも、きっとマンションのベランダにも、実は豊かな自然が転がっています。そしてそれらはみんなそれぞれ私たち人間と同じように生きている命です。命だからこそ不思議があり、驚きや発見、感動があるのです。そして、だから面白いのです。自然あそびというのは、身の回りの自然の一つ一つの命を感じる遊びであるということかも知れません。
子どもが何気ないままごと遊びで葉っぱを使う時、そこに数種類のいい匂いの葉っぱを置いておくとします。子どもがそれをちぎって遊ぶうちに「なんか匂いがする。」とか「スースーする。」とかいうことに気づくかもしれません。それを保育者が「ほんとだ、いい匂いだねー。よく見つけたね!」と共感的に寄り添ったとします。すると、その子は嬉しくなって色々なものの匂いを気にしながら遊ぶようになるでしょう。これはいい匂いとか嫌な匂いとか、葉っぱだけでなく土や木の実の匂いなんかも感じながら遊び続けると思います。ほとんど無意識のうちにです。でも、脳みそはぐるぐる回転しているのです。そしてある時大人が思いもよらないようなもののいい匂いを発見し、「先生、ほら…」とそっと教えてくれるかも知れません。
さりげないことです。でも、そういうことが大事だと思います。そしてそれはどんな環境の園でもきっと実践できることです。大都会の真ん中の、園庭がほとんどないような園ででも、保育者の意識次第で子どもの世界を豊かに広げてあげることができるのです。
子どもが五感を使って遊べる環境を作ること。季節を感じ、命を感じ、子どもと共にそれを楽しむこと。私はその感覚を大切にしたいと思います。それが子どもの自発性を促し、好奇心や探究心、想像力や創造性を豊かにしていく基礎になるはずだからです。保育は楽しいです。そしてとても奥が深いです。
今回も、とても楽しく有意義な研修になりました。秋元先生、ありがとう!(^0^)